入管法(出入国管理及び難民認定法)とは
「入管法」とは「出入国管理及び難民認定法」の略称で、外国人の日本への入国・在留・退去強制・難民認定などを定めた法律です。1951年に制定され、その後数多くの改正を経て現在に至ります。
外国人を雇用する企業にとって、入管法は非常に重要な法令です。適切に対応しなければ、企業・担当者が刑事罰を受けるリスクがあります。「知らなかった」では免責されない点が最大の注意点です。
外国人の就労に関する基本ルール
在留資格と就労の可否
外国人が日本で働くためには、就労が認められた在留資格が必要です。在留資格は大きく3種類に分類されます。
| 種類 | 主な在留資格 | 就労の可否 |
|---|---|---|
| 就労が認められる在留資格 | 技術・人文知識・国際業務、特定技能、技能、経営管理など | 在留資格の範囲内で就労可能 |
| 就労が認められない在留資格 | 短期滞在(観光ビザ)、留学(資格外活動許可なし) | 就労不可 |
| 就労制限のない在留資格 | 永住者、日本人の配偶者等、定住者、特別永住者 | 職種・業種に制限なく就労可能 |
不法就労とは
以下のいずれかに該当する状態で就労させることが「不法就労」に当たります。
- 就労が認められていない在留資格で働かせること(観光ビザでの就労など)
- 在留期限が切れているのに働かせること(オーバーステイ)
- 資格外活動許可の範囲を超えて働かせること(留学生の週28時間超など)
- 在留資格の活動範囲外の業務に従事させること
不法就労している外国人本人だけでなく、雇用した企業・担当者も「不法就労助長罪」として刑事罰の対象になります。「知らなかった」「確認し忘れた」という言い訳は通用しません。
企業(雇用主)に課せられる主な義務
1. 不法就労助長罪(入管法第73条の2)
企業が外国人を雇用する際、その外国人が不法就労者であることを知りながら、または知ることができたにもかかわらず雇用した場合、刑事罰が科せられます。
「知ることができた」(過失がある場合)も処罰対象である点が重要です。在留カードを確認せずに雇用した場合も、この要件に該当しうるとされています。
| 対象者 | 罰則 |
|---|---|
| 不法就労させた事業主・担当者 | 3年以下の懲役または300万円以下の罰金(または両方) |
| 法人の場合は法人に対しても | 300万円以下の罰金(両罰規定) |
2. 在留カード確認義務
外国人を雇用する際には、必ず「在留カード」を確認する義務があります。在留カードは日本在留の外国人が常時携帯を義務付けられているIDカードです。
確認すべき事項
- 在留資格の種類:就労可能な資格かどうか
- 在留期限:有効期限内かどうか(裏面に「就労制限なし」「就労不可」等も記載)
- 「就労不可」スタンプの有無:このスタンプがある場合は絶対に雇用しない
- 資格外活動許可シールの有無:留学生・家族滞在の場合に確認が必要
- 指定書の内容:特定活動ビザの場合は別紙指定書の内容も確認必須
在留カードは必ず原本を直接確認してください。コピーや写真での確認は不十分です。採用時に限らず、在留期限の更新後も定期的な確認を行うことをお勧めします。
在留カードが偽造・変造の場合
在留カードが偽造されている場合でも、雇用主が外見上確認できなかった場合は不法就労助長罪に問われないことがあります。ただし、明らかな違和感がある場合は入管庁への照会(「在留カード等番号失効情報照会」サービス)を利用することが推奨されます。
3. ハローワーク(公共職業安定所)への届出義務
外国人を雇い入れたとき、または離職させたときは、ハローワークへの届出が義務付けられています(雇用対策法第28条・外国人雇用状況の届出制度)。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象者 | 特別永住者と外交・公用を除くすべての外国人労働者 |
| 届出期限 | 雇い入れまたは離職の翌月10日まで |
| 届出方法 | 社会保険加入者は被保険者資格取得届・喪失届と兼用可。非加入者はハローワークへ個別届出 |
| 届出先 | 事業所を管轄するハローワーク(ハローワークインターネットサービスでもオンライン届出可能) |
| 違反した場合 | 30万円以下の罰金 |
届出には氏名・在留資格・在留期限・国籍・生年月日・性別・雇用開始日(または離職日)・在留カード番号などが必要です。人事担当者は雇用時に必ずこれらの情報を記録しておきましょう。
2024年入管法改正のポイント:育成就労制度の創設
2024年6月、入管法が大きく改正されました。最大のポイントは、従来の「技能実習制度」を廃止し、「育成就労制度」を新設することです(2027年施行予定)。
技能実習制度の問題点と廃止の背景
技能実習制度は「国際貢献・技能移転」を名目に創設されましたが、実態は安価な労働力確保の手段として機能しているという批判が長年ありました。転籍(転職)の制限・劣悪な労働環境・失踪者の急増などが社会問題化し、制度の抜本的見直しが行われました。
育成就労制度の概要
| 項目 | 育成就労制度 | 従来の技能実習制度(参考) |
|---|---|---|
| 目的 | 人材確保と育成(特定技能1号への移行前提) | 国際貢献・技能移転(名目) |
| 在留期間 | 最長3年(特定技能1号への移行を目指す) | 最長5年(1号〜3号) |
| 転籍(転職) | 同一業種内で一定要件を満たせば可能(大幅緩和) | 原則不可 |
| 対象分野 | 特定技能1号と同一分野(農業・建設・介護など) | 85職種(より広い) |
| 管理機関 | 育成就労機関(旧・監理団体を改組・強化) | 監理団体 |
企業への影響
- 転籍自由化のリスク:一定期間経過後は同業他社へ転職可能になるため、育てた人材を確保しにくくなる可能性がある
- 特定技能1号への移行計画が必要:育成就労は特定技能1号への橋渡しとして設計されており、中長期的な採用計画の見直しが必要
- 管理機関の監督強化:不正行為を行った育成就労機関は許可取消の対象となり、受入企業も影響を受ける可能性がある
外国人雇用に関するその他の法令
労働基準法・最低賃金法
外国人労働者にも当然適用されます。国籍・在留資格に関わらず、最低賃金以上の賃金・法定労働時間の遵守・有給休暇の付与などが義務付けられています。外国人だからといって低い待遇を与えることは違法です。
社会保険(健康保険・厚生年金保険)
一定の要件を満たす外国人労働者は社会保険の被保険者となります。短期滞在(3ヶ月以下)などの例外を除き、適用事業所で働く外国人は加入義務があります。
個人情報保護法
在留カード番号・パスポート番号・国籍などは個人情報に該当します。採用時に収集する場合は、利用目的の明示・適切な管理・漏えい防止措置が必要です。
企業が取るべき実務的な対策
1. 採用時のチェックリスト作成
在留カード確認・コピー保管・在留期限の社内管理など、採用時の手順をマニュアル化することで、担当者が変わっても適切な対応ができます。
2. 在留期限の社内管理
在留期限が近づいた外国人社員に対し、更新申請の支援・声かけを行う仕組みを作りましょう。在留期限切れ後も継続雇用すると、会社も不法就労助長に問われるリスクがあります。
3. 専門家(行政書士)との連携
入管法の規制は複雑で頻繁に改正されます。外国人雇用に不安がある場合は、早めに行政書士などの専門家に相談することを強くお勧めします。
・不法就労助長:3年以下の懲役または300万円以下の罰金(法人にも同額の罰金)
・ハローワーク未届出:30万円以下の罰金
・技能実習計画未認定での受入:1年以下の懲役または100万円以下の罰金